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2016.01.28 Thursday
<発達障害Q&A>
Q 子どもが親の財布からお金を取ります。とったお金はトイレに隠したり学校にもっていったりします。とったことを忘れてしまっていることもあります。
お金はゲームセンターなどで使うようです。
 
病院で相談したら財布を隠すようにいわれましたが、それでいいのか?と疑問を感じました。どうしたらいいでしょうか?

A   外来でも、同様のご相談をたまに受けますので、親御さんにとって少なくない困りごとの一つと思います。

お子さんの年齢は分かりませんが、ゲームセンターに行くということは、中学生から高校生でしょうか。おそらく、何度か叱責したにも関わらず繰り返される事が最も悩ましいことなのではないでしょうか。

こういった場合、親の立場ではなく、子ども側に立って見ることで対応が考えやすくなるかもしれません。問題としては、大きく2つの場合があるように思われます。

 一つは、衝動的にお金に手が出てしまう場合です。例えば、とても欲しい物があるが自分のお小遣いでは買えないし、親は買ってくれない。あるいは、ゲームセンターに行きたくて仕方がないが、お小遣いが足りない。 ある日、たまたま親の財布が目に入った。「悪いこと」と思いつつも気持ちを抑えきれずに手を伸ばしてしまう、という場合です。

欲求を抑えきれずに咄嗟に衝動的に動いてしまったわけで、心の動きの特徴は「衝動性が高い」ということになります。

二つ目は、欲しい物がある、したい事がある、お金があれば叶う、親に要求してもだめと言われるので、親が見ていない時に手に入れる、という一連の思考と理屈の流れがあり、それにいわば「淡々と従って」行動した場合です。お金は便利なものだが、正当な手段以外で手に入れてはならないという社会のルールを知らない、あるいは十分に理解していないことが背景にあるかもしれません。

一つ目と二つ目の決定的な相違は、本人に罪悪感があるかないかですが、これは大きな違いですので、お子さんの場合はどちらなのか、あるいはどちらに近いのかを見極めて対応や関わりを変えていく必要があるでしょう。
 
さて対策ですが、衝動性が勝ってしまった場合は罪悪感と後悔の念に苛まれることで、なんとか自分の欲求を抑えようという気持ちが芽生えます。衝動性の強さにも個人差がありますが、衝動性のコントロールが上手に身に付く年齢にも個人差があります。

叱られて辛い思いをし、自分を責めたり、後悔しながら、欲求をコントロールする術を次第に身に着けていきます。こういった心の作業は、本人の精神的成長に繋がっていきます。これを見守ることは本人の主体性を尊重し、育てていくことに繋がっていくと思います。叱責も必要ですが、親の「信じて待つ」姿勢も子どもの心の育ちには欠かせません。

本人が懸命に自分の衝動性を抑えようとしている中、現金が沢山入った財布がいつも目の前にあるのは、辛い事でしょう。いくら主体性を重んじるといってもこれでは行き過ぎですし、まるで子どもを試しているかのようになってしまいます。財布の管理は親側の責任です。
 

さて、より対応に苦慮するのは、後者ではないでしょうか。“罪悪感がどうも弱いのではないか”と心配になる場合です。

ご質問では「トイレに隠したり、学校に持っていったり」とありますので、隠してはいるようですが、罪悪感から隠すのではなく、「叱られて嫌な思いをしたくない」という目的のために隠しているのではないですか。

「忘れていることもある」とのことですので、罪悪感があったとしても、かなり弱いのかもしれません。であれば、見守っていることで罪悪感や倫理感が自然に成長するかどうかは難しいかもしれません。かえって頭ごなしに叱責したり、反省を求めすぎると、「親が怒らないように」より巧妙に抜き取るようになるだけかもしれません。

通常は、わざわざ教えなくても「言わずもがな」で身につくはずの社会常識や道徳観念なのですが、特に広汎性発達障害のある場合は、「教えてもらっていないので知らなかった」ということがありえます。いわゆる、「未学習」ですね。

他にも、親が気づかなければOK(叱られずに済めばOK)と思い込んでいたり、他人のお金を勝手に取るのは法律違反だが、家族の物は共有だと思い込んでいた、という勘違い、すなわち「誤学習」という場合もありえます。

こういった「未学習」や「誤学習」の存在が疑われる場合は、まずは「学習」が必要です。「知っているはず」と思いこまずに、その行動について本人が何を考えたか一つ一つ丁寧に聞いてみてはどうでしょうか。

案外、「わざわざ教えなくても知っていると思っていた」のは親の思い込みということもありえます。その中で学習すべき部分を補足していくことが本人の社会感覚を育てていくことになりましょう。

同時に、その行動に対して親がどんな気持ちを持ったか、“悲しかったよ”といったことも率直に伝えることも大切です。中には、“親は自分を嫌いだから怒っている”と考える子どももいるからです。

大雑把に二つの場合に分けて述べましたが、きれいに分かれる訳ではないでしょう。両方ある、こちらが強め、こちらが弱めといったことは子どもによって異なると思います。

このような事を参考に、お子さんの様子を一番よく知っている親御さんなりの「育て」をしていただければと思います。

 
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